試作縫製の記事をなかなか書き進められなかった一番の理由は、
「CALSA長崎トラウザーズ」へブランド名を変更したことです。
今回はその経緯についてお話ししていきます。
もともとブランド名はブログの記事の最初の方でも書いていた通り、
「stitch&stitch長崎トラウザーズ」にすることに決めていました。
「これは一針一針に心を込めて縫っていきたい、またこれからも縫っていこう。」という
想いを込めたいとの考えからでした。
そして、この名前を自分で決めた後に、ブランドとしてロゴマークを作ろうと考えたのですが、以前、洋服のリフォームショップ立ち上げの際にロゴマーク作りとWEB作成をお願いしたデザイナーさんに今回のブランドについてもロゴマークとWEB作成をお願いすることにしました。
しかしながら、その方は元々すごくお忙しい方だったのですが、その間にオランダのアムステルダムに事務所を移すことになられたり、ヨーロッパでデザインや映像関係の賞を受賞されて、日本とオランダの行き来が多くなったりたりとさらに忙しさが増してしまい、結局、ロゴマークまでは何とか作っていただいたのですが、WEBの作成が遅々として進まない状況が続き、最終的にはWEB作成までは難しいという状況になってしまいました。
困ったなぁ~と思っていたところ、たまたま、長崎の地方版のニュース番組で素敵なロゴマークやパッケージ、店舗デザインのお茶屋さんが取り上げられているのを見かけました。
そして、そのブランディングを手掛けているのが長崎のデザイン事務所だということを知りました。
そのデザイン事務所の名前は「デジマグラフ」さんです。
もともとお願いしていたデザイナーさんとのコミュニケーションが遠方でお忙しいためなかなか取りづらかったこと、また、今回に限っては「長崎」のブランドを作るというコンセプトだったため、長崎のデザイン事務所に相談するのもいいのではないかと考えたこと、この2点の理由により、デジマグラフさんに相談してみることにしました。
当初はせっかくロゴまでは決まっているので、まずは販促用のリーフレットやパッケージをお願いしようかなと思い、相談をさせていただくことになったのですが、すったもんだがありまして、一針一針の想いはブランドを作り上げていく中で伝えることができるという言葉に背中を押されて、最終的には全てを一から見直すことになりました。
最終案の一歩手前では「長崎トラウザーズ」という名称でいこうとなっていたのですが、そこでいつもの自分の悪い癖が出てしまい、またまた「悪あがき」をしてしまいました。
せっかく「長崎」のブランドを作るんだから、もう一度、「長崎」の文化や歴史について、特に「服」との関わりについてもっと調べてみようと思い立ち、長崎の図書館で「長崎」に関する文献を読み漁ったのです。
あらためて、長崎は歴史のある街だと感じましたし、「長崎古写真」、「長崎版画」など自分が知らなかった長崎の新たな魅力も発見できました。また、それらの資料により、当時の服装などを知ることもできました。
そして、とうとう、「軽衫(かるさ)」に辿り着いたのです。
その文献は「長崎市史 風俗編 (上)衣食住編」と「新長崎市史 第二巻 近世編」です。
「長崎市史」は大正12年から発刊された全8巻、そして、それを平成になって再編した「新長崎市史」全四巻の文献で、長崎の風習、文化、歴史などを網羅した文献です。
その「長崎市史」の「長崎に定着した衣の文化」の項目の中に、
「カルサンは袴と股引とを折衷したようなものである。往時職人其他髪結など労働に従事する者の間に盛んに行はれた。」(原文引用)
また、「新長崎市史」の中には、
「京都ではポルトガルの風俗がとても流行し、ポルトガルの服やそのほかのものをもっていなければ人とは思われないほどであった。合羽や頭巾(マンチーリア)、カミーザ・ダワノ(肌着の一種)、短い軽衫(カルサ)、無縁帽子(シアボウ)のいろいろの装身具をつけていた。特に軽衫はポルトガル語のカルサン(calção)のことで、武将の戦闘用として使われていたが、後に作業着として職人などにも大いに活用されるようになった。」(原文引用)
と記載されていたのを発見したのです。
よしっ、「カルサ」にしよう!、この文献を読んだ瞬間に即座に決めました。
当時、長崎で作られたズボン・軽衫(かるさ)が京の都で大流行していたことが長崎の人間として、すごく嬉しく、そして誇らしく感じましたし、現代でも長崎からトラウザーズを発信して広めていきたいという想いに通じると感じました。
ロゴの作成からネーミングまでデジマグラフさんには何回も提案をいただいていて、
わたくしの「悪あがき」でご迷惑をお掛けして申し訳なかったのですが、
やっと出会えたという気持ちです。
最初にデザイナーさんにロゴ作成をお願いしようと考えてから、かなりの時間が掛かってしまいましたが、この名前に辿り着くまでの、そしてじっくり考え直すための必要時間だったと前向きに捉えています。
あらためて、「CALSA長崎トラウザーズ」をよろしくお願い申し上げます。
ここに来てくれた方にいいことがありますように。