この果物は何でしょう?
ヒント:しさくにしさくを重ねて・・・(答えは最後にあります。)
 

前回までは縫製工程についてお話してきましたが、とうとう試作縫製の最終回です。

最終回は「プレス工程」についてお話していきます。

当然のことながら、縫製を完了した状態では製品として世に出すことはできません。

シワのない、そしてプレスの効いたキレイなトラウザーズ(スラックス)に仕上げて
初めてお店に並べることができるのですが、このシワのない、キレイな状態にする
という意味合いから、業界では、「仕上げプレス」のことを
「化粧アイロン」、「化粧プレス」と言ったりします。

そのプレス工程の最初の工程は「裾プレス工程」です。

「裾プレス」と言いますが、実際は小股(股の付け根)の部分から
15cmぐらい下のところから、裾までを一気にプレスしていきます。

ご家庭やホテルなどでズボンプレッサーを使用される方もいらっしゃるかと思いますが、
そちらを瞬時に、そしてピシッとプレスの効いたきれいなプレスラインを出すための
機械です。

 

 

クリーニング業界でも使われているものですが、工業用なので、
とにかく蒸気圧と熱量が違います。

通常、家庭用アイロンの蒸気圧は0.3~0.5kgf/cm2、
仕立屋さんなどで使用している職業用の『簡易ボイラー』でも、
1.0~2.0kgf/cm2です。

しかしながら、当社は工業用のボイラーを使用しているので、
5.0~6.0kgf/cm2の蒸気圧を出すことができます。
(家庭用の10倍以上です。)

その5.0~6.0kgf/cm2の蒸気圧で一気にプレスをおこなうため、
キレイなプレスをおこなうことができるのです。

どうしてキレイなプレスができるかということですが、
「乾いた蒸気」のおかげなのです。

「乾いた蒸気」というとちょっとおかしな言い方に聞こえるかもしれませんが、
5.0~6.0kgf/cm2まで蒸気圧が高くなると、蒸気も100℃以上、
カラッと乾燥して、蒸気自体が透明になっていきます。

蒸気が乾燥しているということはプレスをした際の生地からの蒸気(水分)の抜けも早く、
さらに強力なバキュームにて瞬時に余分な蒸気も吸い上げるので、蒸気が残らず、
シワのない、スッキリとした仕上がりになるのです。

蒸気圧が低いと蒸気が湿りがちで、生地に水分と余熱が残ってしまい、
時間が経つにしたがってシワが戻りやすくなってしまいます。

こちらが実際にプレスしているところです。
後ろの方に蒸気が上がっているのが見えますが、これは蒸気が外に噴き出してきて、
空気中の水分と触れるため、白い蒸気になっています。
 

 
次に「腰プレス」の工程をおこないます。
 

 
こちらは主に腰回りとループ(ベルト通し)をカッチリ当てていきます。

最後に「仕上げアイロン」をおこないます。
 

 
こちらは裾プレス、腰プレスで当てられない部分について、手作業のアイロンにて
丁寧にシワとりや仕上げのライン付けなどをおこなっていきます。

加えて、追加の工程として「尻ぐせ取り」もおこなっております。
 

 
こちらは尻ぐり部分の生地をアイロンでヒップ方向に持ち上げながら、
くせ取りをおこない、ヒップ周りにゆとりを持たせる効果があります。

こちらのアイロンですが、よく見ると厚みが薄くないでしょうか?
 

 
こちらも先ほどの説明と同様に、蒸気圧が高く、蒸気の温度が高いボイラーを
使用しているため、蒸気がボイラーからアイロンまで到達しても冷めません。

よって、蒸気でアイロン自体を温めることができるので、
アイロン自体にヒーターをつけなくてもいいのです。

アイロン自体を軽くして作業性を高めることもできるのですが、
一番のメリットは生地が焼けるのを防ぐことができることです。

最後になりましたが、こちらが仕上がり後のトラウザーズ(スラックス)になります。
 

 
ようやく完成しました。ピシッと見えますでしょうか。

試作縫製に長い間お付き合いいただいき、本当にお疲れ様でした。
そして、ありがとうございました。

ちなみにまだまだ続きます。
試作縫製のブログを書いている間にもいろんなことがあり過ぎで、
書き切れてないことがいっぱいあります。

少しずつですが書いていきますので、今後ともよろしくお願いします。

答え合わせですが、正解は「八朔(はっさく)」です。
しさく(試作)にしさく(試作)を重ねて、、、

もともと広島で開発された品種みたいですが、長崎でも結構穫れるんです。
甘酸っぱくておいしいです。
後味悪かったらすみません。

ここに来てくれた方にいいことがありますように。