(ひらがなの「し」?)
トラウザーズ(スラックス)の試作縫製5回目として、
今回はパーツ工程の中の「前立て(まえたて)」パーツの
パーツ作りについて説明していきます。
こちらが「前立て(まえたて)」の表地です。
フロント部分の裏側に付けられるパーツで、
こちらに付けられています。
役割は2つあります。
1つはファスナーやボタン穴を取り付けて、トラウザーズ(スラックス)の
前開きができるようにする役割です。
もう一つは、フロント部分には「前立て(まえたて)ステッチ」という
表(おもて)ステッチを入れるのですが、その縫い縮みを防ぐための
補強布の役割です。
前立て(まえたて)ステッチの写真です。
前身頃(まえみごろ)の生地一枚だけでは厚みが薄すぎるため、
前立て(まえたて)ステッチが縫い縮みやすくなります。
(この縫い縮みのことを縫製の世界では「ピリ」と呼びます。)
前立て(まえたて)ステッチが入るフロント部分は
トラウザーズ(スラックス)の顔と呼ばれる部分なので、
特に「ピリ」への注意が必要です。
次に仕様についての説明ですが、
前立て(まえたて)の外側端の裁ち切り(たちきり)部分には
主に、オーバーロック(かがり縫い)仕様やパイピング仕様が用いられます。
今回の当社のトラウザーズ(スラックス)の試作ではパイピング仕様を
採用していきます。
理由としては、裁ち切り部分のほつれ止めのためと、
今回の試作ではポケット地などにも表地(おもてじ)を使用し、
内側がほぼ一色の同色となってしまうので、内側の色のアクセントのためです。
あらためてみるといかがでしょうか?
パイピングもなくて、裁ち切り部分が同色系の色だったとすると、
ちょっとのっぺりした印象に感じませんか?
それでは前立て(まえたて)パーツの作り方を説明していきます。
今回の当社のトラウザーズ(スラックス)ではファスナー仕様を採用していきます。
まずは前立て(まえたて)の裏面に強度を出すために補強芯(接着芯)を貼ります。
前立ての形に裁断された補強芯(接着芯)を貼りつけます。
写真の上のパーツが補強芯(接着芯)です。
わかりづらいのですが、拡大してみると、
白いつぶつぶが見えます。
こちらが糊(のり)のつぶになります。
こちらを前回ご紹介したローラープレスで貼りつけます。
ローラープレスはこちら
流し込むところはこちら
貼りつけた写真ですが、ほとんどわかりませんでした。
次に、パイピングの布地を
パイピング縫い付け用ラッパを取り付けたミシンを使用して、
裁ち端に縫い付けていきます。
最後にファスナーを取り付けます。
ファスナーは前立て(まえたて)パーツの切り込みのポイントと
ファスナーの虫カン(下止まりの金具)の位置を合わせ、
裁ち端から、2mm離したポイントから縫い始め、
中間地点で4mm、縫い終わりのポイントで6mmの間隔を
空けて縫い付けます。
こちらが出来上がりの全体写真です。
(ちょうどいいサイズがなくて、ファスナーが長すぎました。)
このように縫い付けることで、フロント部の前合わせかぶりを作ります。
フロント部分がこちらです。
上前(うわまえ)(左側)の前身頃(まえみごろ)を開いてみると
かぶりの部分がわかるかと思います。
このかぶりがないと下のファスナーが見えてしまい
カッコ悪いトラウザーズ(スラックス)になってしまいます。
以上、パーツ縫製の前立て(まえたて)パーツ編でした。
次回は「天狗(てんぐ)」のパーツ縫製について説明していきます。
ここに来てくれた方にいいことがありますように。