今回のブログは「ゴルフ用トラウザーズ」というタイトルにしましたが、正式には「4WAYストレッチトラウザーズ」と言った方がいいかもしれません。
機能性素材を使ってCALSA(カルサ)のトラウザーズを作ってみようということで、まずは生地探しから始めました。
そもそも世の中にはどんな機能性素材があるのだろうと、生地を取り寄せながら色々調べてみたのですが、
本当にいろいろな機能を備えた生地があるのですね。
・ストレッチ
・透け防止
・吸湿速乾
・抗菌
・制菌
・消臭
・花粉対策
・撥水(はっすい)
・接触冷感
・接触温感
・蓄熱
・断熱
・吸湿発熱(ヒートテックのような素材)
・帯電防止
・高視認(夜にライトで光りやすい高反射素材、蛍光素材など)
・UVカット
ちょっと調べただけでもこんな感じでした。
糸の段階から機能を付与する物から、生地に織り上げた状態で加工する物、また、製品として出来上がった状態でスプレー等で吹き付けるものなどその加工方法も様々です。
以前のポリエステルのイメージとしてはどうにかしてウールやシルクなどの素材に近づけようとして作られた化学繊維というイメージしかなかったのですが、最近では高機能と合わせて、肌触りなどもかなり良くなっているものも出てきてるようです。
その中で今回、CALSA(カルサ)用に選んだのは東レさんが開発したシェルタリングドライという素材を使った生地です。
(ベルナルド・ベルトルッチ監督作品の「シェルタリングスカイ」(?)と勘違いしそうですが、全く関係ないみたいです。
坂本龍一さんの同名曲も大好きです。)
脱線してしまいましたが、こちらの生地の主な特徴としては以下のようなものが挙げられます。
1.4WAYストレッチ
2.透け防止機能
3.吸湿速乾
4.接触冷感
5.UVカット機能
1.4WAYストレッチ機能
4WAYストレッチ機能についてですが、4WAYってこんなに伸びるのかというのが正直な感想でした。
実際、トリコットという特殊な編み方をしている生地でストレッチ性も高いため縫製にはかなり気を使いましたが、
着用時、特に膝の曲げ伸ばしの際などのストレスがほとんど感じられず、結構感動モノでした。
もともとスポーツウエアにも使用されている素材ということで、スポーツとCALSA(カルサ)で考えた場合、
紳士淑女のスポーツであるゴルフとの相性が良いのではないかと思い、作成してみました。
また、最近ではインナーやマスク用にも使われている素材なので肌触りもサラリとしてかなり良い感じです。
まぁ、いいスコアにつながるかは何とも言えませんが...。
(横伸び)
(縦伸び)
2.透け防止機能
透け防止機能についての検証ということで、今回は「白」の素材を選んでみたのですが、生地1枚だけの仕立てでは、やはり透けが気になりました。
(表地1枚)
そこで、膝裏(ひざうら)というキュプラ系の白の裏地を付けてみたのですが、やはり少し透けが気になるレベルでした。
(写真を取り忘れてしまいました。スミマセン。)
そこで、最終的には、同素材を裏地代わりにして腰から太もも辺りまでを2枚重ねにしてみたのですが、これでほぼほぼ透けをシャットアウトできました。
こちらは2枚重ねの透け具合です。
(表地2枚重ね)
もちろん、2枚重ねになるので、重さがどうか気になりましたが、同じストレッチの伸び具合で着用時のストレスも感じないため、重さもほどんど気になりませんでした。
基本的にはお客様の意向に沿ってお仕立てしたいと考えておりますが、当店としては白色の生地には2枚重ねをおすすめしたいと思います。
カラー展開としては、白以外にも、ベージュ、グレー、紺、黒などがあるのですが、グレー、紺、黒などは一枚仕立てでも問題ないと思います。
3.吸湿速乾
こちらについてはメーカーが品質検査会社依頼した作成した品質基準証にて確認しました。
吸湿については「滴下法」を採用。「滴下法」とは水を生地に一滴滴下し、水滴が生地に吸収されるまでの時間を測定するそうです。
10秒以下で吸収されれば、吸湿機能があると判定されるそうで、10秒以下でした。
速乾については「拡散性残留水分率」にて判定。
水を生地中央に0.3ml滴下し、水分の拡散乾燥にともなう、試験片重量を5分間隔で自動測定するそうです。
ちなみに計算式はこちらになります。
拡散性残留水分率(%) = ( 任意の時間の水分重量(g) / 測定開始時の水分重量(g) ) × 100
よくわからなかったのですが、60分後に0、つまり完全に乾ききっていたので、効果ありとのこと。
ざっくり言うと、加工していないものよりも30%ぐらい速く乾くと速乾機能があると判定されるようです。
4.接触冷感
「精密迅速熱物性測定装置」というものを使用し、以下の手順で測定するそうです。
・室温と試料(測定台)を同じ温度に設定。
・室温の+10(ΔT=10℃)もしくは室温+20(ΔT=20℃)に加熱した測定部を試料に接触させる。
・接触初期の熱源板の温度を測定し、熱流束を算出。
・熱流束の極大値(W/㎠)をqmaxとする。
こちらも仕組みは全くわからないのですが、qmaxの値が、室温の+10(ΔT=10℃)で0.1以上、室温の+20(ΔT=20℃)で0.2以上あればその効果があると判定されるようなのですが、室温の+20(ΔT=20℃)で0.231で効果ありの判定結果でした。
ちょっと冷やっとするということを数値化するってすごいですね。
5.UVカット機能
日本化学繊維協会が制定した紫外線カット素材の加工効果統一評価方法である分光光度計・全波長域平均法により
紫外線遮蔽率を測定。
一般的に90%以上がUVカット機能があると認定されるそうですが、今回の測定結果は97.0%などでかなり高い紫外線遮蔽率のようです。
今回、紫外線について調べてわかったことなのですが、紫外線を防いでくれるオゾン層は地上から約20km上空の成層圏にあるのですが、その厚みはたったの3mmしかないそうです。
そして、そのたった3mmのオゾン層が有害な紫外線が地上に降り注ぐのを防いでくれており、もしオゾン層が無くなってしまったら、陸上の生物は死滅するそうです。
また、UNEP(国連環境計画)から「現状からオゾン層の破壊が10%進むと皮膚がんが26%増加する。」と警告が出されており、
実際に、世界で毎年200~300万人が皮膚ガンになっていて、320万人が紫外線による白内障になっているそうです。
紫外線の増加により植物の生育不良やプランクトン減少にもつながる為、世界規模の食糧危機の可能性もあるとのこと。
現在、オゾン層の破壊に大きな影響を与えているフロンガス(成層圏に達すると強い紫外線を浴び塩素を放出しオゾン層を破壊するそうです。)は生産規制や回収義務が課せられていますが、すでに放出されたものは30~50年間漂いながら、成層圏へと上昇しています。
今後、世界規模でのフロンガスへの対応が急務であると同時に、私たちも自分自身で身を守るため、日焼け止めクリームやUVカット機能の衣類などで紫外線対策を取る必要があるのかも知れません。かなり深刻な内容でびっくりしてしまいました。
次回はシルエットの画像です。
ここに来てくれた方にいいことがありますように。
本サイト → CALSA(カルサ)長崎トラウザーズ