(いろとりどりの鼻?)
前回、トラウザーズのパーツの中でメインとなる前身頃(まえみごろ)と
後身頃(うしろみごろ)の説明をしたのですが、
今回は細かいパーツを紹介していきたいと思います。
一般的に、表地のパーツと裏地のパーツに分かれます。
表地のパーツとは文字通り、表側に出る生地のパーツで、
主にウールなどの素材が用いられます。
(こちらは表地の反物(たんもの)、「原反(げんたん)」と呼びます。
反巾(たんはば)は150cm前後です。)
裏地のパーツは裏側にくる生地のパーツということで、
トラウザーズ(スラックス)の場合、主に2種類の素材で、
一つ目は、ポケットなどに使われる綿やポリエステル素材の袋地、
(こちらは袋地の反物(たんもの)、綿素材です。
反巾(たんはば)は120cm前後です。)
二つ目は、主に前身頃の裏側に付ける膝当て(ひざあて)というパーツに
使用されるキュプラやポリエステル系素材の裏地を指します。
(こちらは膝当て(ひざあて)の反物です。
わかりづらいですが、キュプラ素材で光沢があります。
反巾(たんはば)は90cm前後です。)
それでは、まず、表地のパーツについてなのですが、
以下のようなものが挙げられます。
◆ループ
◆帯(おび)
◆脇当て(わきあて)
◆見返し(みかえし)
◆口布(くちぬの)
◆向当て(むこうあて)<向布(むこうぬの)>
◆前立て(まえたて)
◆天狗(てんぐ)と天狗鼻(てんぐはな)
なんだか聞き慣れない言葉が並んでますが、
それぞれ、写真で見るとこんな感じです。
◆ループ
裁断された時には細長い布です。
こちらをひも状に縫製し、主に8~9cmの定尺でカットして、
「ベルト通し」として使用します。
裏側に来る縫い目を拡大するとこんな感じです。
こんな感じで使われています。
◆帯(おび)
こちらも裁断された時は横長の布になります。
こちらは裏に芯地を貼り付け、張りと強度を持たせて、使用します。
ここに使われています。
◆脇当て(わきあて)
脇ポケットに使用される布で、ポケットと前身頃を結ぶ役目をします。
ちょっとわかりづらいですが、ここに使われています。
◆見返し(みかえし)
通常、脇ポケットの裏側に付けるパーツで、
ポケットの補強やポケットにカーブのデザインを作る際に必要なパーツです。
ここに使われています。(脇ポケットの裏側部分です。)
ちなみに当社で販売予定のトラウザーズの仕様ではここに使われています。
表から見た時に、裏側の生地(見返し)を
1mmほど出しているのがわかりますか?
これは「もみ玉仕立て」と言われる仕様です。
アイロンワークと指先の感覚で均一にもみ玉を出すため、
ちょっと手間が掛かるのですが、
脇ポケットのさりげないアクセントになっておしゃれだし、
昔ながらの手法で、「見返し」が少し表に出ているので、
前身頃のポケット口(くち)のスレを防ぐ効果もあるため、
当社ではこちらを採用しようと思っています。
◆口布(くちぬの>
このポケットを最初に考えた人ってすごいなぁ~と
感心させられるパーツです。
この布がここに使われています。
ちょっと想像がつきにくいですが、
この部分を「玉(たま)」と呼びます。
まんまるの玉ではないのですが、実は生地を輪っか状に縫い上げていて、
それを横から見るとまんまるの玉みたいに見えるからという説が有力です。
玉が一つだけだと「片玉(かたたま)」、
上下に2つあるのを「両玉(りょうだま)」と呼びます。
こちらが「片玉(かたたま)」です。
大きな玉がひとつだけです。
こちらが「両玉(りょうたま)」です。
玉が上下2つに分かれているのがわかります?
◆向布(むこうぬの)<向当て(むこうあて)>
ポケットが開いた時に通常、色が違う袋地が
表から見えるのを防ぐ効果があります。
ポケット内側のスレ防止の効果もあります。
ここに使われています。
◆前立て(まえたて)
このパーツにファスナーを付けて、
トラウザーズ(スラックス)の前開きができるようにします。
また、トラウザーズ(スラックス)の顔となる前立てステッチ(フロントステッチ)を
入れる際の裏側の補強材の役目もします。
見えないけど、とっても重要なパーツです。
ここに使われています。
◆天狗(てんぐ)と天狗鼻(てんぐはな)
このパーツが天狗(てんぐ)です。
このパーツだけだとあんまり想像できませんよね。
それではこちらを見てみてください。
こちらのパーツが天狗鼻(てんぐはな)です。
なんとなく、鼻(はな)に見えませんか?
やっぱり、パーツだけだと見えにくいですよね。
では、完成形ではどうでしょう?
先のとがったところが、天狗の鼻に見えませんか?
そう、こちらの形状が天狗の顔と鼻に見えることから
その名が付いたと言われています。
昔の人の想像力とか発想ってすごいですよね。
ユーモアのセンスを感じます。
ほかにもこんな形状もあります。
これは烏(からす)のくちばしに似ていることから、
「からす天狗」と呼れています。
古くはこのパーツ自体を「烏(からす)」と呼んでいたらしいのですが、
「天狗」という呼び名の方が一般的になり、「からす天狗」、「鼻付き天狗」など
呼び分けて使うようになったようです。
ブランドやメーカーによっていろんな形状があるのでいろいろチェックしてみてください。
ちなみに当社のブランドではこの仕様にしようと思ってます。
品のいい丸みを縫製とアイロンワークで表現しました。
先端が少しずつ斜めになるようなパターンにして、
天狗が表にのぞかないようにする効果も持たせています。
いろいろ好みはありますが、現時点ではこれがお気に入りです。
またまた、長くなったので、また、次回。
ここに来てくれた方にいいことがありますように。