(アップにするとちょっと怖いですが、トラウザーズには鳩のある部分が潜んでいるのです。)
今回は試作縫製の第16回目、組み立て工程の完了まで説明していきたいと思います。
前回、ループ付け工程まで説明しましたが、今回は前立てステッチ入れから説明していきます。
前立てステッチはこちらです。
ファスナーを縫い付けている前立てパーツと左側の前身頃を留める役割とフロントのアクセントとなる飾りステッチの役割があります。
次に天狗ステッチを入れていきます。
天狗ステッチは天狗パーツと右側の前身頃を留める役割があります。
両方のステッチを入れることで、フロント部分の内側もステッチで押さえられて、スッキリとなります。
その後、ボタンホールを空けていきます。
ボタンホールはその名の通り、ボタンを留めるための穴で、穴の周りをかがり縫いする専用の電子ミシンを使用しています。
当社ではドイツデュルコップ社製の電子ボタンホールミシン581を使用しています。
かがり縫いの縫い目がキレイでボリューム感があり、ボタンホールがより立体的に仕上ります。
どうでしょうか、立体的に見えるでしょうか?
ちなみに、この縫いが立体的に見えるということを縫い目が立つと表現します。
他のボタンホールミシンもいろいろと試しましたが、現時点ではこちらのミシンで縫った縫い目がキレイに立っていて、一番気に入っています。
ところで、こちらのボタンホールの写真をジーッと見ていると鳩の目のように見えませんか?
実はこのボタンホールのことを鳩目(はとめ)とも呼びます。
かばん業界でもひも通し用の金属の穴のことをそう呼んだりもするそうなのですが、
案外、一般的なのかもしれません。
次にカンヌキという留め縫いを脇ポケット、後ろポケット(ピスポケット)、小股部分に入れていきます。
当社ではJUKI社製のLK-1900というカンヌキ専用の電子ミシンを使用しております。
こちらのミシンの特徴としましては、D字カンヌキ(Dカン)というカンヌキ縫いを入れられます。
こちらがD字カンヌキ(Dカン)です。
アルファベットのDの文字に似ていることからその名前が付けられています。
こちらは見た目もカッコよくなりますが、より広い範囲を留縫いすることができるので、後ろポケットのポケット口(くち)の端など特に力がかかりやすい部分の強度アップに効果があります。
次に中間プレス工程として脇縫い割り(わり)、内股縫い割り(わり)をおこないます。
縫い代(ぬいしろ)を開いてアイロンしていくことを「割る」と表現します。
通常、脇縫い、内股縫いをおこなった後の縫い代は閉じた状態になっております。
当社では直本工業社製の自動脇、内股縫い代割りプレス機NB181VBを使用しています。
通常のアイロンでの作業より、より高圧の蒸気でプレスできるため、割りプレスがキレイに仕上がります。
こちらが仕上がり後(割り後)になります。
重なりがなく、キレイに開いた状態で、プレスされています。
最後にシックを天狗裏に縫い付けます。
(シックの作り方についてはこちらをご覧ください。)
基本的にはこちらの工程まで、全て裏返しの状態で縫い上げます。
出来上がりはこちらになります。
表返しにするとこのようになります。
今回の試作縫製ではトラウザーズの内側にも全て表地を使用しているので、
少しわかりづらかったかもしれません。
これで、組み立て工程での縫製作業は全て完了です。
次回はちょっとだけ手縫いでおこなうまつり縫いの工程について説明していきます。
ここに来てくれた方にいいことがありますように。