「ファスナー編」の第2回目です。

『ファスナー』を語る上で絶対に外せない会社が2社あります。

アメリカのタロン社と日本のYKK社です。

タロン社はファスナーの元祖みたいな会社で、他のメーカーはタロン社を目標に品質の向上に努めたそうです。
タロン社の品質の高さは、1920年代初期にアメリカ軍へ納入を果たし、厳格さで知られている
「ミルスペック」を獲得したことでも証明されています。

「ミルスペック」とは、正式には「Military Specification」、「米軍仕様書」という意味で、
品目や材料、工程手順などが厳格に規定されたもので、それをクリアしたものだけが許される栄誉だったのです。

戦場でいざという時に役に立たないと、命に関わりますからね。

タロン社でもう一つ。初めてジーンズにファスナーを採用したのはリー(Lee)なのですが(1920年半ば)、
そのときに採用されたのが、このタロン社の「42オートマチック」だったのです。

「42オートマチック」は歴史に残る名品で、閉じたときの幅が42ミリだったことから「42」の愛称が付きました。

スライダー部分にスプリングが内蔵されていて、閉じる時にスライダーが自動的にロックできるという優れもので、
そこからオートマチックと呼ばれました。

残念ながら1992年に生産が中止となり、現在ではタロン社のブランドそのものも経営上の理由で他社に
吸収されてしまいました。

現状はよくわからないのですが、日本では山崎商事株式会社という商社が多数コレクションをされているようです。

一方、YKK社は言わずと知れた世界シェア50%、日本シェア90%を誇るファスナーのリーディングカンパニーです。

1934年に創業者・吉田忠雄が、東京・東日本橋にサンエス商会を設立し、ファスナーの加工・販売を
始めたのがスタートです。

当時は務歯(ムシ)というファスナーのかみ合う部分を櫛を使って手で植えていたので、量産はできず、
品質が不安でした。

1945年に吉田工業株式会社に社名を変更、翌年、商標を「YKK」としました。

1955年、富山県の黒部工場が稼働して、ファスナーに使う金属の鋳造、テープ部分の糸を紡ぐ紡績設備まで
備えて、一貫生産が可能になってからは、品質が飛躍的に向上、やがてライバルのタロン社を質、量ともに
追い抜いてしまいます。

1994年、吉田工業株式会社からYKK株式会社に社名を変更、世界各地に工場を持ち、
世界シェアの50%を占める一大企業となり、タロン社とは対照的になってしまいました。

そして最近すごいニュースが入ってきました。(2019年現在)

なんと、YKKとミシンメーカーのJUKIの共同開発として、土台のテープの無いファスナーが誕生したそうです。

その名も、「AiryString™」(エアリーストリング)!

JUKI社が開発した特殊ミシンで縫製することで、土台のテープが不要になり、材料の削減や
すっきりとした印象によるデザインのバリエーションの広がりにもつながるそうです。

また、縫製の際はファスナーパーツを直接生地に縫い付けるため、従来必要だったステッチ工程が省け、
縫製工程の簡略化を図れるとのこと。

いろいろ進化しています。

次回も「ファスナー」についてお話していきます。

ここに来てくれた方にいいことがありますように。