今回は「ファスナー」編の最終回です。

日本にファスナーが初めて現れたのは1917年です。
輸入された財布に付いていたものが最初です。

1927年に、広島の日本開閉機会社という会社がファスナーの生産を始め、「チャック」のブランドで発売しました。

開けたり、閉めたりが簡単にできる巾着(きんちゃく)からヒントを得たものだといいますが、
「チャック」という言葉は広島生まれということになります。

もちろん、英語ではないので、アメリカでもイギリスでも通じません。

英語でチャック(Chuck)と言えば、ドリルの刃を取付け部分や旋盤加工用の万力のことを指します。
ぜんぜん違います。

ちなみにイギリスでは「ファスナー」のことをジップ(Zip)、もしくはジップファスナー(Zip fastener)と言います。

話は変わりますが、風の強い日でも炎が消えない有名な『ジッポライター』、
このライターの開発者ブレイズデルもジッパーという言葉の軽快な響きが好きでライターの名前にしたかったのですが、
『ファスナー』の商標としてすでに使われていたため、やむなく発音の似ている「ジッポー」にしたということです。

ところで当初、ブーツ用として開発された『ファスナー』ですが、洋服用として一般的になったのは
いつぐらいからなのでしょうか?

ジーンズのリーが1920年半ばに初めてジーンズに『ファスナー』を採用しましたが、
当初は衣服に『ファスナー』を使用するのは下品とみなされていたようです。

イギリスでは1934年にはマウントバッテン伯爵という人が、スラックスの前開きにファスナーを
使用していたといいます。

しかしながら、その頃はまだ一般的にはボタン留めが主流でした。

その後、1937年に、「エスカイヤ」誌が「バトル・オブ・フライ(前立ての闘い)」という記事の中で、
「ファスナー」がボタンに勝利したと報じており、その頃には『ファスナー』の方が主流になっていたようです。

また、バッグに初めて「ファスナー」を採用したのはエルメスだそうです。
1920年に発売された旅行用バッグ「ブガッティ」で採用されました。

フランスの高級クラシックカー「ブガッティ」のラジエターの形状(半楕円形)に似ている事から
その名を付けたと言われています。

当時からかなり高価だったようですが、シンプルで機能性に優れていると、働く女性たちから支持を得て、
かなり売れたそうです。

現在でも「ボリード」という名前に変わり、100万円を超える価格で販売されています。

ここに来てくれた方にいいことがありますように。